住宅取得は消費増税前・増税後どちらがお得か【2012/12/26】

今夏、消費増税法案が可決された。現行5%の税率が2014(平成26)年4月に8%、2015(平成27)年10月に10%へアップするという内容。

以来、私の仕事場にも「家を建てるには増税前と増税後どちらがお得?」といった質問・相談が数多く寄せられている。住宅という高額な買い物を控えた方にとってはタイミング次第で大きな支出が発生するだけに悩みを抱くのも不思議ではない。



工事請負契約の締結時期で経過措置がある
注文住宅の場合、原則として工事請負契約が法律の施行日前に締結されていても、引渡し日が施行日後となる場合には増税後の税率が適用されることになるが、今回の法律では附則の中で、2013(平成25)年9月末までの請負契約締結分は現行5%の税率、2013(平成25)年10月1日から2015(平成27)年3月末の間の請負契約締結分は8%の税率適用と経過措置が明記されている。

消費増税の経過措置

増税後に住宅価格の下落は起こるか?
土地を購入して建物を建てる場合、消費税の対象は建物のみで土地には課税されない(購入時に不動産業者に支払う仲介手数料には課税される)ので、例えば2000万円の建物を建てる方は、8%にアップで60万円、10%にアップで100万円の税負担増となる。

前回1997(平成9)年4月の3%から5%への増税後には、多くの駆け込み需要の反動により住宅不況が発生し、その結果、増税後に住宅価格が下落したとする意見をしばしば耳にするが果たしてそれが正解なのかは疑問。当時は国内外に信用不安が蔓延した時期であり、住宅の買い控えは増税だけが原因ではなかった。ましてや現状の住宅価格をみれば、このデフレ下においてすでにかなりのレベルに下落しており、前回同様に今回も増税後に住宅価格がさらに下落すると考えるのは早計ではないかと思う。逆に政権を奪還した自民党安倍晋三首相の掲げる経済政策(アベノミクス)により、物価が上昇し、住宅価格がアップする可能性もなきにしもあらずである。

注目すべきは金利動向
今回の法律では「経済状況を好転させること」を増税の前提条件としており、今のところ2013(平成25)年4-6月期の経済指標を目安(8月に速報値)に増税か否かを判断するようだ。状況によっては増税そのものが延期になりかねないだけに、年明けから新政権によってアベノミクスの様々な施策が強力に実行されていくだろう。

私の個人的な見方では、アベノミクスが成功したケースでは「物価上昇」「円安」「株高」「長期金利上昇」が起こり、反対に失敗のケースでは「景気低迷」「国債暴落」「長期金利上昇」「スタグフレーション(不景気であるにもかかわらず物価上昇インフレーションの状態)」が起こるのではないかと予測する。いずれにせよ住宅取得者(すでに変動金利で借入をしている入居者も)には現状と比較して不利な局面が訪れるのではないかと思う。消費増税は数十万円~100万円ほどの負担増で済むが、金利上昇はそれとは比べものにならないほどの負担増をもたらす恐れがある。下の返済比較例をみれば一目瞭然。数字上はわずか0.5%や1%ほどの上昇でも驚くほどの差が生じることになる。

■返済比較例(借入額2000万円 返済期間35年 全期間固定金利)
借入金利 2.0% 2.5% 3.0%
毎月返済額 66,252円 71,499円 76,970円
総支払額 27,825,840円 30,029,580円 32,327,400円
差額 +2,203,740円 +4,501,560円


※日経平均株価・10年国債利回り・住宅着工戸数とフラット35(住宅金融公庫)金利推移はこちら

条件が揃っているのなら「今が一番」
住宅取得時期に対する私の持論は「今が一番」。但し、ムリな計画は絶対に避けるべき。住宅取得は、条件が揃っていないにもかかわらず「お得」だからといって軽はずみに足を踏み出すものではない。それだけリスクを伴うのが住宅取得である。

人生のロードマップにおける時期、仕事・収入をはじめとする家計の安定性など、慎重に検討を重ね、すべて条件が揃っているのなら、増税のような外的要因に「損だ得だ」と一喜一憂することなく、躊躇せずに一日も早く家族みんなが喜ぶ快適な暮らしを手に入れることをおススメしたい。

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