Q:資金計画で注意するポイントを教えていただけますか?
家づくりを計画中です。地元の建設会社(大工さん)に頼もうか大手のハウスメーカーに頼もうか悩んでいます。なにせ何もかもが初体験のことばかりで、まずは資金計画だけでも自分達で考えておきたいと思います。ネット検索しているうちにこちらのホームページを拝見しました。よろしかったら資金計画で注意するポイントを教えていただけますか?よろしくお願いします。A:回答
【ポイント】1.チラシのキャッチコピーに注意すること
2.長期返済の落とし穴にはまらないこと
3.見積書をきちんと確認すること
4.人生のロードマップを作成すること
『チラシのキャッチコピーに注意すること』
家づくりを考え始めると、今まで見向きもしなかった新聞の折込チラシが気になります。いろいろ勉強し、自然と知識が身についており、以前なら読み飛ばしていた建築用語もスッと頭に入ってくるからみていて飽きません。
そんなチラシの中に気になるキャッチコピーを見つけることがあります。
「チャンス!自己資金ゼロで夢の一戸建てが・・・」
自己資金不足で、家づくりを諦めかけていた方にとってはとても興味をそそられるコピーです。
住宅雑誌などを読むと「住宅取得費の20%、それにプラス諸費用分は手持ち資金を用意しよう!」と書いてあります。仮に2500万円の計画なら、その20%は500万円。年収と同じ貯金など無いと諦めかけていたところに「頭金なしでOK」とくれば気持ちがグラっとなる可能性が高まります。
しかしここで冷静になることです。
なぜ「頭金なしでOK」なのか?
理由は簡単です。住宅取得費全額を住宅ローンで借りる仕組みだから。
いま現在、一般の方が利用できる住宅ローンの大半は、建築資金の全額!100%融資が可能です。なかには火災保険など諸費用分までも融資対象にする銀行もあるので、まさに頭金なしの住宅取得が可能になります。つまり多額の自己資金を用意しなくても、比較的容易に住宅を手に入れることができる時代になったということです。
しかしその反面、新居での暮らしが始まってからの家計への重い返済負担、定年後もなお続く長期の返済苦を覚悟しなければならないかもしれません。
『長期返済の落とし穴にはまらないこと』
銀行はお金を貸して金利を儲けることが仕事。不動産担保をとり、生命保険への加入が条件となる住宅ローンは、銀行にとって安定した収益が見込めるおいしい商品です。
だから担保価値と返済能力がクリアすれば、100%融資や35年の長期融資でも喜んでお金を貸してくれます。
住宅ローンを長期返済で組むと毎月の返済額が減り負担感が薄くなります。よく業者が「今お住まいのアパートのお家賃並みで・・・」と言いますが、これが落とし穴になりかねません。
<例:2,000万円を金利3.0%で借りたケース>
20年返済 毎月返済額 110,919円 返済総額 26,620,565円
35年返済 毎月返済額 76,970円 返済総額 32,327,009円
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
毎月返済額の差 33,949円
返済総額の差 5,706,444円
上記の例は、20年と35年の返済例を比較したものです。
35年返済を選択すると毎月の返済額は7万7千円、確かに家賃並みです。20年返済と比べると家計への負担感が一気に薄くなります。
でも返済総額をみてください。金利を570万円もたくさん支払うことになります。もしも570万円あったら何ができますか?よくよく慎重に検討したいものです。
またチラシを隅々までみてみると、「お家賃並み」の毎月返済額だけをデカデカと書き、ボーナス加算分を極小さな文字で書いている悪質なケースもあるので注意が必要です。
『見積書をきちんと確認すること』
一般のお客さまが数社を比較検討する場合、特に難しいのが「見積書」の読み方です。
見積書は、あなたの大切なお金が、何にいくら使われるのかを明らかにするとても重要な書類です。数社の見積書が、すべて共通書式だと比較も簡単ですが、まず間違いなく各社バラバラです。これらを正確に読み取り比較する作業は至難の業です。
中でも「諸経費」という項目に注目してくだい。諸経費は文字通り、工事の着工から完成までの会社の経費です。一般的には、労災など各種保険料や、現場管理上の人件費、通信交通費などの経費等が計上されます。
しかし悩ましいことに各社ごと「諸経費」の中身が違います。見積書には明確な作成ルールがないためこんなことが起こります。
また業者によっては「諸経費」という項目自体を削除して「当社は諸経費をいただきません」としながらも、上手に別項目に分散させたり、別途費用で請求するという会社もあります。
見積書の提示・説明を受ける際には、必ず見積内訳書、図面、仕様書とともに説明を受けるようにしましょう。
『人生のロードマップを作成すること』
お金の話はとても大切です。手持ち資金の使い方や住宅ローンの組み方次第でその後の生活が一変してしまう可能性もあります。
家づくりは人生の中の大きな事業のひとつといわれます。会社を起こすときには誰でもきちんと事業計画をつくります。では家づくりの場合はどうでしょう。
つくる前は設計図や見積書を何度も丹念にチェックします。しかし入居後のことになると、業者や銀行が作ってくれた資金計画書(ただの返済表です)だけで数十年間つづく家づくり事業に踏み出す方がたくさんいます。
「自己資金」「借入金額」「返済金利」「返済年数」「毎月返済額」
これだけではほんの目先のことしか把握できません。
家づくりにも事業計画が必要です。
カタチに決まりはありません。スタート時点から返済完了までの計画をつくり、それを商談中もローン相談の時にも常に手元に置いておきます。事業計画といってもカタ苦しいものではなく「家族みんなの人生のロードマップ(行程表)」といった感じでいいと思います。作成することが重要です。
●年後→家族ひとり一人が何歳→どうなっているだろうか?
10年後、15年後、20年後・・・・・35年後。
仕事、収入、教育、妻の再就職、子供の独立、親との同居、リタイア後の夢など、可能性のあるものはドンドン書き出します。
※人生のロードマップ(サンプル)はこちら
今から5年くらい先はイメージできても10年とか20年後、ましてや35年も先のことだと「そんな先のことはわからん!」と具体的なイメージを描きにくいのは確かです。でも現実に、その不確定な20年、35年先までつづく住宅ローン=借金を決断しようとしているのです。
ローン債務のある家は、返済が完了してはじめて自分のものになります。所有権はあっても抵当権がくっついていれば、返済不能になると差押・競売です。競売になっても、売却額が残債を下回るとその差額分や遅延利息が数百万円も一括請求されることさえあります。
仮に「今」が良くても、返済が終わるまでにはきっと何度かの景気の波も経験することになるでしょう。
「なんとかなるさ」は、もはや通用しない時代です。
またなぜか家づくりにおいては、普段とても堅実な方でさえ、数十万、数百万単位の金額に慣れてしまい、金銭感覚が麻痺してしまう危険性があります。「100万円多く借りても月々4000円増えるだけだろ。いいんじゃない!」といった感覚、まさに長期返済のマジック。その結果、必要以上の大きな家になってしまったり、見た目重視の高額設備機器にムダな出費をしてしまいかねません。もちろん、長期返済が悪いといっているわけではなく、返済完了までの計画が描けていることが重要だということです。
人生のロードマップを考えることは、土地選び、建物の規模や間取り、リフォーム時期、手持ち資金の使える額、ローン借入上限金額、繰り上げ返済時期などを冷静に考えることにも必ず役立ちます。
自分にあった最適な家とは、性能数値だけではなく、経済的にも物質的にも家族のライフプランにフィットし続けていく家だと思います。
ぜひ一度、家族の人生のロードマップを考えてみることをお勧めします。
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