Q:ハウスメーカーか工務店か、どこを選べばいいのでしょうか?

はじめまして。最近本格的に家を建てようと思い始めたものです。ネットで検索するとハウスメーカーはいろいろな経費がかかって高いので工務店で建てたほうがいいという意見と、工務店は零細企業が多く先行きに不安があるからやっぱり家をつくるならハウスメーカーが安心という意見があり、正直どちらで計画すべきか迷っています。ハウスメーカーか工務店か、どこを選べばいいのでしょうか?



A:回答

【ポイント】
1.企業規模は安心の証しではなくなった
2.有名企業だから優れているとは限らない
3.価格差とお金の対価
4.結婚相手を決めるのと同じ心構えで


『企業規模は安心の証しではなくなった』

家づくりの建築業者選びにおいて企業規模は重要ではなくなりました。資本金や売上高、店舗数が良い家づくりの指標になることはありません。

もっとも現代の消費者に「上場企業だから安心」という考えの方は、極めて少なくなっているはずです。

バブル景気の80年代は住宅がブランド名でも選ばれた時代でした。

有名タレントを起用したテレビCMや新聞・雑誌への大量の広告出稿の影響で、「○○ハウス」「△△ホーム」という大手プレハブメーカー、大手ハウスメーカーの家に住むことを一種のステータスと感じる人々がたくさんいた時代です。

しかしバブル崩壊後は銀行までもが一瞬に潰れてしまう時代に突入。

住宅業界においては、かつて「御三家」といわれ一世を風靡した日本電建・殖産住宅・太平住宅はとっくの昔にすべて消え去ってしまい、ミサワホームが業績悪化から産業再生機構の支援を受けたことは記憶に新しいはずです。そしてこの数年間にも、数社のハウスメーカーが業界からあっさりと撤退しています。

また大手を中心に行ってきた自社保証制度は、耐震偽装事件の発覚であてにならないことが明らかになり、保証資力の確保については「住宅瑕疵担保履行法」によりすべての業者に義務づけられました。したがって保証、安心という点において、企業規模の大小で比較することはほとんど意味をなさなくなったといえます。

『有名企業だから優れているとは限らない』

大手ハウスメーカーの優れている点はデザイン力と企画力。これは紛れもない事実です。

高度な専門教育を受けた数多くのスタッフや研究所をかかえ、国内外、新旧のトレンドや各種調査データをもとにつくり上げていくデザインや商品企画には目を見張るものがあります。流石です。ただ、それ以外に大手の優位性はないと私は思ってます。

例えば住宅性能表示制度に基づく10項目の評価、工務店でも十分に最高等級を取得することができます。

例えば盛んにCMで流される「外張断熱」工法、工務店でも十分に施工することができます。

最近の家づくりでは、かつては存在した「大手だから」「大手しか」という選択理由はほとんど見当たらなくなりました。

反対に、あなたが無垢材をふんだんに使った家づくりを希望する場合、大手ハウスメーカーは対応できません。無垢材にはソリや割れの可能性があります。数千、数万棟といった数をこなすハウスメーカーの場合、品質の安定した良質木材を揃え、なおかつ万が一のクレーム処理までを考えるとリスクが高すぎるわけです。どうしてもという場合には、オプション扱いとなり、驚くような追加金額が発生することになるでしょう。

そして施工品質=職人の質、腕。これも大手だからという優位性はありません。なぜなら大手ハウスメーカーの家であっても、実際に現場で作業しているのは地元の下請け工務店(協力業者)だからです。

『価格差とお金の対価』

日本の住宅価格は高い順に次のようになります。

大手ハウスメーカー > 地域ビルダー > 地場工務店

日本を代表する大手プレハブメーカー各社には「工業化認定住宅」のお墨付きが与えられています。そのお墨付きの意味するものは、部材の規格化、工法の標準化により高品質=低価格な住宅の大量供給という使命です。

しかし現実は、高品質=ブランド=高価格という姿です。

これは日本の大手ハウスメーカーの次のような体質が原因です。
1.莫大な広告宣伝費(CM・新聞・雑誌)
2.豪華なモデルハウス出展(建設費・維持費)
3.多大な人件費(大量の営業マン・多くの間接社員)
4.多額の事務所費(好立地に立派なオフィス)

住宅の品質とは無関係なこれらの経費がすべてコストとなり、それがお客さまの負担に転嫁される仕組みになっています。また前記のように下請け工務店の利益分も上乗せされるため、高価格設定は当然の結果といえます。

地場工務店のなかにも高い価格設定の会社は存在します。

一般的に工務店はコンパクトな経営です。社員ひとり一人が何役もこなし、社屋も社長の自宅兼用などで簡素、豪華なモデルハウスももたず、ムダな固定費がかかりません。たとえ無名であっても優良な工務店に出会えば、高品質=低価格な家づくりは十分可能です。

しかしその多くが、技術力はあってもデザインやプランニング力に劣り、知名度も低いといった弱みを抱えています。

工務店の高コストの原因は次のようなものが考えられます。
1.高い材料費(良質木材・高級瓦など)
2.高い職人費(腕のいい大工・左官など)
3.手間のかかる仕事(土壁・手きざみ作業など)
4.業務が非効率(IT化・機械化の遅れ)
5.仕入ルートの未整備(仕入コストが高い)
6.少ない現場数(現場の非平準化)

また工務店には「元請け」タイプと「下請け」タイプの2種類があり、前者のなかには、独自の信念をもち、最新知識の習得に熱心で、品質を高めながらもムダを省くといった努力や工夫をする会社があります。後者は元請けである大手ハウスメーカーの指示通りに作業をこなすだけに終始する会社が比較的多い傾向にあります。同地域、同規模であっても両者には大きな企業間格差が生じています。

「この会社を選んだら自分のお金は何に使われるのだろう」

ときにはこんな側面から考えてみることも大切です。

『結婚相手を決めるのと同じ心構えで』

業者選びは、家づくりという人生の大事業を成功させるためのパートナー選びです。入居後も長く付き合っていくことになるパートナーを選ぶのです。

お客さまのなかには「結婚相手を決めるのと同じだ!」といった人もいます。結婚相手といってもまんざら過言ではない気がしますね。

コツコツ貯めてきた貴重なお金を使い、そのうえ数十年間つづく住宅ローン=借金を借り、やっと手に入れる我が家。住み始めて気に入らないからといってすぐに建替や売却などできないのが家です。一度手に入れると簡単に手放すわけにはいきません。

ブランドや見栄、世間体など気にせず、身の丈にあった自分たち家族に相応しい家づくりを検討しましょう。

家づくりを経験された方々からは、「家を持つ前に想像していたほど、他人は私の家のことなんか気にしてはくれない」といった印象をよくうかがいます。世の中はそんなものなのかもしれませんね。

企業規模の大小を気にする必要はありません。カタログや雑誌、チラシ、ホームページは自社自慢の広告です。それだけでは本質など絶対にわかりません。

気になる会社があれば面談を繰り返し、納得するまで提案を受け、妥協することなくトコトン現場を確かめ、そして決断する。

これがパートナー選びの基本です。

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