Q:家づくりのスタート時点では何をすればいいのでしょうか?

はじめまして。これから計画をはじめるものです。これまで2、3年ごとの転勤の繰り返しで、定年までは持ち家はムリだと諦めてきましたが、このたび家庭の事情で急に家を建てることになりました。今まで家を持つことに無関心であったため、まったく知識がありません。一体誰に相談してどんな風に進んでいくのかもわかりません。そんな折にネットでこちらのサイトに出会いました。一体家づくりのスタート時点では何をすればいいのでしょうか。恐縮ですがお返事をよろしくお願いいたします。



A:回答

【ポイント】
1.決して焦らないこと
2.人生のロードマップ(行程表)をつくること
3.家族でよく話し合うこと
4.自分たち家族を基準とした『我が家の要望ノート』を作成すること
5.他人の意見など得た情報は必ず精査すること


『決して焦らないこと』

家づくりのスタートにあたって一番大切なことは、焦ったり、中途半端な判断で急ぎ過ぎないことです。

いつの世でも我々消費者の周りには、誘惑の言葉が満ちあふれていますね。「消費税増税前」とか「決算値引き」、「●●キャンペーン」など。

本当に『今』があなた(あなたの家族)にとって家づくりの最適なタイミングなのか、突っ走らず、流されず、立ち止まってよくよく考えてみましょう。ハウスメーカーや工務店は、年中なんらかのキャンペーンや特典提供を行なっているものです。たまたま目にした文言に、「ラッキー!ツイてる!」などと一喜一憂してはいけません。

なぜなら、家づくりとは、何千万円ものお金を投資して行う人生の一大事業だからです。それも多くの人にとっては、その投資するお金の大部分は借金ですからね。

例えばあなたが今、脱サラして起業すると考えてみてください。どうしますか?

そうですね。「エイヤー!」と気合いだけで起業する人はいないでしょう。必ずあれこれと入念に事業計画を立てるでしょう。起業に必要な「人・金・モノ」の調達手段、万が一のときの対処方法、そして撤退のケースも想定しておくなど、念には念を入れて事業にのぞむはずです。眠れない夜を過ごすこともあるかもしれません。家族を抱えて脱サラ・起業するのです。家族を路頭に迷わせるわけにはいきません。誰しも失敗したくない!必ず成功したい!と願っているから当然です。

でも残念ながら、起業と同等、あるいはそれ以上の借金を抱えることになる家づくりでは、そこまでしっかりとした計画を立てる人は非常に少ないというのが私の印象です。

私は、実際に家づくりを計画中の方々に、「なぜマイホームを持ちたいのですか?」「なぜ今なのですか?」「返済不能になる可能性はどれくらい?」と少し意地悪な質問を投げかけたりします。こういった質問は、その人がどこまで真剣に計画を立てられているのかがよくわかります。

で、その結果は。

「そろそろ歳も歳だし・・・」
「最近、会社の同僚が家を買ったから・・・」
「消費税が上る前に・・・」
「家賃を払うのが馬鹿バカしく思えて・・・」
「いざとなれば売ればいいでしょ・・・」
「何とかなるさ!・・・」

本当にビックリするような回答が多くて驚きます。これがひとたび何らかの事業を起こすとなれば、絶対にこのような回答は返ってはこないと思います。「何とかなるさ」で起業に踏み切る人は極マレでしょう。

家づくりは、完成した建物をハウスメーカーや工務店から引渡しを受け時点が完結ではありません。

引渡しを受け、入居すると、「家を持ったぞ!これで俺も一国一城の主!」と勘違いする人がいます。でもそれは、すべて現金で家を持った人にいえるのであって、借金で家を建てたり買ったりした人の場合は、20年後、30年後、借金を全部払い終えて(完済)はじめて自分の家だといえるのです。

確かに、自分の名前で所有権の登記がなされていますけど、それに加えて銀行など金融機関の抵当権も設定されています。つまり担保にとられているわけです。一定期間、返済が滞れば有無をいわさず差押、競売が待ち受けており、それでも残った残債は、自己破産でもしなければ、家を失った後も勿論、返済し続けなければなりません。

今は昔と違って、一度就職すれば定年まで右肩上がりの安定収入が期待できる終身雇用の時代ではなくなりました。どんな大企業、優良企業といえども、数年後、十数年後の姿は誰にもわかりません。だから、自分の身に起こりうるあらゆるケースを想定しておくことが大切なのです。

『人生のロードマップ(行程表)をつくること』

では具体的にどういうことをすればいいのか?

まず、あなた自身を含めた家族全員の人生のロードマップ(行程表)をつくります。

あくまでも、これから将来へ向けたロードマップです。不確実な夢や希望があってもいいと思います。想定可能な、できるだけ具体的な将来の出来事を時系列に書き出していきます。

・子育て【小中大学(公立・私立)への入学・卒業など】
・仕事【昇進、転勤、退職、転職、妻の復職など】
・介護【父母、義父母など】

※人生のロードマップ(サンプル)はこちら

それらの出来事に対して、どれくらいの出費を準備しておく必要があるのか具体的な数字を記入します。これで現時点における、あなたとあなたの家族の人生のロードマップが出来上がります。起業における事業計画書ですね。

『家族でよく話し合うこと』

ロードマップが完成したら、それをもとに夫婦(家族)で話し合いましょう。

・自分たちにとって、『今』が家づくりに最適なタイミングか
・住宅ローンの完済まで、本当に支払い続けることができるだろうか
・将来を見据えて、どの場所に建てるのがベストの選択なのか

人間は物欲の強い生き物です。そして現代は、以前と比べて誰でも比較的簡単に家を持つことができます。だから突然、「家、建ててしまおうか」と安易な計画に走り始めることがあるかもしれません。でも決して焦ったり浮かれたりすることなく、スタート時点でしっかりと家族全員で計画を練り上げることが重要なのです。

例えば、建築場所の選定、土地探しの場合。

子育て世代の土地探しでは「人気の●●学区限定」というリクエストがよくあります。可愛い大切な子どものことを考えた親心ですから否定する気持ちはありません。

でも、ここで人生のロードマップを見ながらよく検討して欲しいのです。

あなたの家族にとって学区が問題となるのは何年間ですか?ということ。

小学校は6年間、中学校は3年間、そして高校は3年間、最長でも12年間。その間だけに焦点を当てた土地選定で本当にいいんですか?ということ。

あまりにも学区へこだわることから、これまでと比べて大幅な通勤時間を強いられることになったり、人気場所がゆえに坪単価が周辺相場よりも高いとか、立地最優先で、地形や日当りなどの住環境を犠牲にした土地を買うことになったりしかねません。戸建でもマンションでも、不動産は文字通り動かせないものです。一度手に入れてしまうと、必要ないから、気に入らないから、もうこれ以上払えないから、といってポイと処分することは容易ではありません。

特に、中古の住宅流通市場が未発達な日本では、多くの場合、家を手にした(中古になった)瞬間から確実にその価値は目減りしていくため、売却金額が住宅ローンの残債額を下回ることは珍しいことではありません。つまり、いざとなっても売りたくても売れない最悪の状態に陥る可能性が大いにあるということです。

そんな、人生における大きなダメージを避けるためには、必ずスタート時点でひと呼吸おき、夫婦、家族でしっかりと入念な計画を立てるようにしましょう。

絶対に他人と比べたり、見栄を張ったりしないでください。

『自分たち家族を基準とした我が家の要望ノートを作成すること』

これから建てたり購入したりする家は、自分たち家族のための家です。あなたの家族と他人の家族は違うということを常に頭に置いておきましょう。

育った環境も違えば価値観も異なります。他人が「いいね!」「安いね!」「快適だね!」と感じることが、そのまま自分に当てはまらないことも多々あるはずです。そんな他人の意見や感想を見聞きしたとき、絶対にブレたり流されたりしてはいけません。そのためには計画のスタート時点で、自分自身、自分たち家族を基準とした情報収集・情報整理をしておきたいものです。

目的意識をもたず、やみくもに住宅展示場に足を運び、手当たり次第にモデルハウスを見て回っても、得られる有益情報は限られています。お子さんが大喜びで走り回るだけ、大人は疲れるだけです。

まずは自分たち家族が「住みたい家」「買いたい家」はどんな家なのか、優先順位(これが重要!)をつけながらきちんとまとめておくことがとても大切です。

書店に行けば、家づくりの参考になる雑誌や書籍がたくさん並んでいます。インターネットを利用すると、自宅に居ながら膨大な量の情報へ簡単にアクセスすることもできますね。気に入った外観、間取り、空間、使ってみたいキッチン、浴室、洗面台などの写真や図があれば、ドンドン切り取ってノートや紙に貼り付けておきましょう。

また、建材メーカーや住宅設備機器メーカーのショールームを見学するのもいいですね。ショールームのスタッフは高い専門知識を持ち、モデルハウスの営業マンとは違ってムリな売り込みをしませんから安心して何でも質問できます。カタログも無料でもらえるので、採用を検討したいものがあれば切り取ってノートに貼り付けておきましょう。建材や設備機器などへの知識をある程度もっておけば、後々の商談の際に冷静な対処ができるはずです。時々、大きなコンベンションセンターなどでたくさんのメーカーが出展する見本市イベントが開催されますから、そういう機会に参加してみるのもおもしろいと思います。

そして「こんな家には絶対に住みたくない!」という視点からも考えてみてください。いま現在の住居や育った実家で困ったことを書き出します。

たとえばこんなこと。
・結露がひどい
・収納が少ない
・室内の暑さ寒さが耐えられない
・上下階の音が気になる
・家事動線が悪い
・玄関ホールにトイレが嫌

自分のノートです。遠慮はいりません。ドンドン書き出しましょう。

こうした作業を繰り返していくと、自分たち家族を基準とした完全オリジナルの『我が家の要望ノート』が出来上がります。このノートがあれば、どのハウスメーカー、工務店、建築家と家づくりをする場合でも、ノートを差し出すだけであなたの家族の要望は一目瞭然です。あとは商談のなかで、土地の条件や予算をにらみながら、優先順位を考えて取捨選択をしていけばいいのです。

このノート作りは結構楽しい作業です。ぜひチャレンジしてみてください。

『他人の意見など得た情報は必ず精査すること』

それから、家づくりは大きな買物ですから、ついつい身近な他人(時には身内)に相談したくなるかもしれませんが、安易に他人の意見を求めたり、その言葉を鵜呑みにしないこと。いろいろ情報収集することは構いませんが、得た情報はきちんと精査すること。この点はかなり重要です。

あなたの周りには、家づくりに精通した人など、そうそういるものではありません。有益な意見を得ることはなかなか期待できないと思います。特に親御さんであれば、大変な借金をする子どもへの心配が第一になるでしょうし、最近家を持った人がいたとしても、それはその人の家づくりであって、その人の意見が、あなたの家づくりに当てはまるかどうか。かえって自分が選んだハウスメーカーや工法、断熱材などへの偏った考え方を聞くことで、冷静な判断の妨げになる危険性だってあるかもしれません。

あなたの家づくりに起こるどんなトラブルに関しても、相談を受けた他人は何ひとつ、絶対に責任をとってはくれませんからね。当たり前のことです。

よく、家づくりの事前準備には最低1年以上はかけなければダメ、といった専門家の意見がありますが何の根拠もありません。わずか数か月で満足のいく家づくりをする人もいれば、何年間も時間をかけた挙句に不満だらけの家づくりになってしまった人もいます。家づくりはすべて自己責任です。あくまでも自分のペースでコツコツと準備を始めてください。そしてすべての条件が揃ったとき、あなたの家づくりが始まります。

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