Q:「建築条件付」土地購入時の注意点を教えてください。

はじめまして。住宅取得を計画中の●●と申します。30代の夫婦と5歳、2歳の子供の4人家族で、建築地さがしからスタートし、ハウスメーカーや地元工務店さんにもお話を伺っています。最近になり以前モデルハウスに行ったハウスメーカーさんから、私たちの希望する区内に好物件があるとお手紙をいただき早速案内をしていただきました。本当に場所も広さも値段も私たちの条件にかなり近い物件でした。自分たちなりにこれまで随分探してきたのですが、人気のある区域であるようで、全然売り物件がでませんでしたからとても嬉しく思いました。ところがよく説明を聞いてみると、建築条件付きであるため、そのハウスメーカーさんでしか家を建てることが出来ないそうです。そのハウスメーカーさんは私たちの中では嫌ではないけれど好きでもないランクで、また営業の方が「他にも検討客がいるのですぐに結論を」とちょっと強引な感じで不安になります。でも本当に稀少な土地ですから簡単に諦めることには躊躇します。もしよろしければ「建築条件付き」土地購入時の注意点を教えてください。よろしくお願いいたします。



A:回答

『自分たちにとって10年、20年、30年後も最適な土地なのか』

場所も価格も希望条件にピッタリの土地が建築条件付というケースはよくあります。売主のハウスメーカーや工務店側も入念な市場調査から、早く売って、早く建てて、早くお金を回収できそうなニーズの高い土地を仕入れていますから当然です。

建築条件付は建物の建築業者が限定される土地であるため購入を躊躇する人が多いのも事実です。どんなに土地を気に入ったとしても将来後悔しはしないか●●さんのように不安を感じるのも不思議ではありません。

失敗しない土地選びをするためには10年、20年、30年後のこともしっかりと考えることが大切です。なぜその場所でなければダメなのか、その区域を希望する理由は何なのかもう一度考えてみましょう。

例えば小・中学校の学区に関する問題は、子供を生み続けない限り10年前後で片づきます。その先の生活のほうがずっと長く続きます。最寄駅、買物、医療機関などへの距離も本当に耐えきれない距離なのか、先入観で判断せず実際に足を運んで調べてみることです。駅まで少々遠くても少しだけ早起きすれば解決できるかもしれません。反対にいくら駅に近くても、住みたくない家ならどんなに頑張ってみてもストレスが溜まるばかりです。また人気のある土地ほど周辺相場より高いのが一般的です。自分にとってその金額に見合うだけの価値が本当にある土地なのかどうかも検討材料です。

利便性のいい大通り沿いの土地を買い家を建てたはいいけれど、交通量が多くて子供にとって非常に危険だったり車の出し入れに支障をきたすとか、常に騒音や前を通る他人の目が気になるなど想定外のデメリットは結構あるものです。

いいな、と思える土地と出会えたら平日・休日朝・昼・晩の人の流れ、周辺環境の変化を確認しましょう。できれば晴れ・雨といった天候による変化も見ておきたいものです。

そしてその土地の上には、実際に自分たちの希望する家が建つのかどうかを必ずチェックしておかなければなりません。買ったはいいけど、建ぺい率容積率などの法規制により希望の間取りができないとなれば元も子もありません。

しっかり調査検討した結果、やはり手に入れたい土地ならば、売主のハウスメーカーや工務店と膝を詰めて真剣に交渉しましょう。どうしても担当営業マンと相性が悪けば遠慮せずに思い切って上司の方に申し出てみてください。何らかの対処をしてくれると思います。

『法的な注意点』

以下は建築条件付取引について法的な注意点です。

建築条件付とは建物の施工業者を限定する条件をつけた土地取引のことです。買った土地にはあらかじめ売主が指定した業者でしか建物を建てることができないという制限をつけた取引です。

通常の土地取引なら購入した土地をどう使おうとも、どこに建築を依頼しようとも買主の勝手ですが、建築条件付土地ではその権利を制限してしまいます。よって、土地の売主が施工業者を限定して土地を売買することは独占禁止法(独禁法)に違反する恐れがあるとされてきました。

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 【独占禁止法】第五章 不公正な取引方法
 (不公正な取引方法の禁止)
 第十九条 事業者は不公正な取引方法を用いてはならない。
          ↑  ↑  ↑
 【公正取引委員会】「不公正な取引方法」
 (昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)

 10.抱き合わせ販売等
 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品
 又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他
 自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。
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そのため、不動産業界の自主規制団体である不動産公正取引協議会が「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」で次の3つの要件を定め、これを満たせば独禁法に抵触しないという公正取引委員会の例外的なお墨付きを得て慣習化してきました。

 <業界ルール3原則>
 1.土地売買契約後3か月程度で建築請負契約が成立することを停止条件とする
     ↑
   ※停止条件(民法127条1項)
    停止条件付法律行為は停止条件が成就した時からその効力を生ずる
 2.建物の建築を請け負う業者は、土地の売主(その子会社含む)またはその代理人に限る
 3.建物請負契約が成立しなかったときは、預り金、申込証拠金など受領した金銭をすべて返還する

この業界ルール3原則に沿った契約形態が、これまで一般的に馴染みのある建築条件付土地取引です。

しかし現在は不動産の表示に関する公正競争規約施行規則の変更で業界ルール3原則が次のように変わっています。

 <変更点>
 1.土地売買契約後、建築請負契約が成立するまでの期間を従来の3か月程度から「一定期間」とする
 2.建物の建築を請け負う業者の制限をなくし「自己の指定する建設業を営む者(建設業者)」とする
  (建築請負契約の相手方となる者を制限しない場合を含む)
 3.建物請負契約が成立しなかったときの条件は、停止条件だけでなく「解除条件」も認める

   ※解除条件(民法127条2項)
   解除条件付法律行為は解除条件が成就した時からその効力を失う

 参照:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則

【ポイント】
期間の設定が任意になった

「1か月」「6か月」「1年」など、売主と買主の当事者間で自由に取り決めることができます。

でも中には土地売買契約と建物請負契約の同時締結を迫ったり、ただ図面にセットプランを落し込んだだけの契約書を作成したり、買主の希望する十分な検討時間を与えない業者も存在します。

建物はじっくり考えたいと思ってはいても営業マンから結論を急かされ、半信半疑で入念な検討をしないまま建物請負契約を締結。しかしふたを開けてみると、契約後の打合せでプランの変更ができないとか、要望を伝えるたびにオプションでドンドン追加費用が加算されたというような事例はたくさんあります。

どんなに気に入った土地を購入できても実際に生活するのは家です。土地の魅力だけを重視しての性急な結論は絶対に避けるべきです。

施工業者の制限がなくなった

施工業者を「売主」「売主指定業者」「買主指定業者」など、売主と買主の当事者間で取り決めることができます。

しかし実際には、買主の指定する業者による建築を無条件で売主が認めることはまずないでしょう。もし認めるのであればハナから建築条件付にする必要はありません。土地の売買契約を、あえて売りにくい建築条件付にするのは、建築する建物からも売上、利益を獲得する目的があるからです。

ときには「建築条件を外せます」というケースもあります。しかしその場合は「ただし土地代が200万円アップ」といった具合に本来儲けるつもりだった金額を当初の土地価格に上乗せするやり方です。

施工業者の選択は家づくりの成功へのキーポイントです。土地のためなら仕方ないという考え方はお勧めできません。大切なお金を使って建てる家です。住みはじめてから「失敗した」と思っても後の祭り。もう後戻りはできません。たとえ選択肢が少ない場合でも、その中での慎重な選択を行うことです。

解除条件も認める

停止条件の場合は、条件が成立したとき【建物請負契約を締結】に「契約(土地売買契約)時点に遡って」有効になる契約です。したがって条件が成立しなければ、その契約(土地売買契約)自体がなかったものとして扱われるので、支払った金銭は返還されます。

ところが解除条件の場合は、条件が成立したとき【建物請負契約が締結できない】に、その契約(土地売買契約)を解除する契約です。つまり土地売買契約は、契約時点から発効しているという点が大きな違いであることを覚えておいてください。

普段目にしない法律や規則はなかなか難しいものです。でも面倒臭いからと十分な理解をしないまま契約書に印鑑を押すようなことは絶対にしないでください。

悪徳ではなくても、売上や利益のためなら、ありとあらゆる手を使って契約に結び付けようとするのが業者です。そして一旦結んだ契約はなにが何でも解約を阻止してきます。それが彼らの仕事だからです。

契約とは当事者双方にとても重い責任が生じる法律行為です。曖昧な点をひとつとして残してはいけません。その業界の法律や慣習を一般消費者が知らないのはあたり前です。だからこそ不動産取引では契約前に宅地建物取引主任者による重要事項説明が義務付けられています。わからないことは遠慮せず理解できるまで質問し納得した上で契約してください。

場合によっては断ること、あきらめることも大事です。その土地だけがあなたにとって唯一無二の土地ではないはずです。

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